2025年、日本の労働市場は大きな転換期を迎えています。物価上昇を背景に、多くの企業が賃上げに踏み切り、全国平均年収は458万円、前年比2.8%の上昇を記録しました。本記事では、業種別の賃上げ動向と2026年の見通しについて詳しく分析します。
2025年の賃上げ概況
2025年の春闘では、大企業を中心に30年ぶりの高水準となる賃上げが実現しました。日本経済団体連合会の調査によると、大企業の賃上げ率は平均3.2%に達し、中小企業でも2.5%程度の賃上げが見られました。
この賃上げの背景には、以下の要因があります:
- 物価上昇への対応:消費者物価指数が2%を超える上昇を続け、実質賃金の低下を防ぐ必要性が高まった
- 人材獲得競争:少子高齢化による労働力不足が深刻化し、優秀な人材の確保・定着のために待遇改善が不可欠に
- 政府の後押し:岸田政権以降の賃上げ促進政策、最低賃金の引き上げが企業の賃上げを後押し
- 企業業績の回復:コロナ禍からの回復で、多くの企業が賃上げ原資を確保できた
業種別の賃上げ動向
給与指数ジャパンのデータを基に、主要業種の賃上げ動向を見ていきましょう。
介護・福祉業界:+6.5%(最高上昇率)
2025年最も高い賃上げ率を記録したのは介護・福祉業界です。政府の「介護職員処遇改善加算」の拡充により、介護職員の平均年収は465万円に達しました。
人手不足が特に深刻なこの業界では、賃金改善なしには人材確保が困難という現実があります。外国人労働者の受け入れ拡大と合わせて、待遇改善が進んでいます。
IT・通信業界:+5.8%
DX需要の拡大により、IT人材の獲得競争が激化しています。平均年収985万円と高水準ながら、さらに5.8%の上昇を記録しました。
特に、AI・機械学習、クラウド、セキュリティ分野のエンジニアは、転職市場で引く手あまたの状況です。企業は優秀なエンジニアの流出を防ぐため、積極的な賃上げを実施しています。
コンサルティング業界:+4.5%
企業のDX支援や経営改革ニーズの高まりにより、コンサルティング業界も好調です。平均年収845万円で、4.5%の上昇を記録しました。戦略コンサルタントや ITコンサルタントの需要が特に高まっています。
物流・運輸業界:+4.2%
2024年問題(ドライバーの時間外労働上限規制)への対応として、物流業界は大幅な賃上げを実施しました。トラックドライバーの確保が業界全体の課題となっており、待遇改善が急務となっています。
飲食・サービス業界:+3.8%
コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食・サービス業界も回復傾向にあります。人手不足を背景に3.8%の賃上げを実現しましたが、平均年収425万円と他業界と比べるとまだ低水準にあります。
金融・保険業界:+3.2%
平均年収1,250万円と最も高い水準を維持しながら、3.2%の賃上げを実現しました。メガバンクを中心に、若手人材の確保を目的とした初任給の大幅引き上げも話題となりました。
製造業:+2.3%〜2.8%
自動車・輸送機器(+2.3%)、電機・精密機器(+1.9%)など、製造業は比較的穏やかな賃上げとなりました。グローバル競争の激化や半導体不足の影響など、不確実性が高い中での判断となっています。
地域別の賃上げ傾向
賃上げは都市部だけでなく、地方にも波及しています。ただし、その程度には差があります。
- 東京都:平均年収612万円(前年比+3.1%)
- 大阪府:平均年収512万円(前年比+2.9%)
- 愛知県:平均年収498万円(前年比+2.7%)
- 福岡県:平均年収445万円(前年比+2.5%)
- 北海道:平均年収402万円(前年比+2.2%)
リモートワークの普及により、地方在住でも都市部の企業で働けるケースが増え、地方の賃金水準も上昇傾向にあります。
最低賃金の影響
2025年10月、全国平均の最低賃金は時給1,100円を突破しました(前年比約5%増)。東京都では時給1,163円に達しています。
最低賃金の引き上げは、特に非正規雇用者や中小企業で働く人々の収入増加に直結しています。一方で、人件費増加に対応できない中小企業の経営圧迫という課題も生じています。
2026年の見通し
2026年の賃上げについて、以下のような見通しが立てられます。
賃上げ継続の見込み
物価上昇が続く限り、企業は実質賃金の維持のために賃上げを継続すると予想されます。2026年春闘でも3%前後の賃上げが期待されています。
業種間格差の拡大
IT、金融、コンサルなど高収入業界と、小売、飲食などの業界との格差がさらに広がる可能性があります。スキルによる賃金差も拡大傾向にあります。
成果主義への移行
年功序列型の賃金体系から、成果・スキルベースの賃金体系への移行が進むと予想されます。特に大企業でジョブ型雇用の導入が加速しています。
賃上げを実現するために
個人として賃上げを実現するためには、以下のアプローチが有効です。
- 市場価値を把握する:給与指数ジャパンの給与計算ツールで自分の相場を確認
- スキルアップを続ける:需要の高いスキルを習得し、市場価値を高める
- 転職を視野に入れる:現職での昇給が難しければ、転職も選択肢に
- 交渉力を身につける:昇給交渉や転職時の年収交渉スキルを磨く
まとめ
2025年は日本の労働市場にとって、賃上げの転換点となった年です。全国平均年収は458万円、給与指数は103.5(2020年=100)と、着実に上昇しています。
業種によって賃上げ率に差はありますが、全体として賃金上昇トレンドは続いています。このトレンドを活かすためにも、自分の市場価値を常に意識し、キャリアを戦略的に構築していくことが重要です。
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