日本は先進国の中でも男女間の賃金格差が大きい国として知られています。給与指数ジャパンのデータによると、同年代で比較しても男性と女性の間には20-30%の年収差が存在します。本記事では、この格差の実態と原因、そして解消に向けた動きと個人ができることについて解説します。
男女間賃金格差の現状
2025年のデータから、年齢別の男女年収格差を見てみましょう。
- 20-24歳:男性328万円 / 女性298万円(差:10%)
- 25-29歳:男性412万円 / 女性345万円(差:16%)
- 30-34歳:男性502万円 / 女性398万円(差:21%)
- 35-39歳:男性585万円 / 女性425万円(差:27%)
- 40-44歳:男性672万円 / 女性448万円(差:33%)
- 50-54歳:男性762万円 / 女性478万円(差:37%)
20代前半では10%程度の差ですが、年齢が上がるにつれて格差は拡大し、50代では37%もの差になっています。これは先進国の中でも非常に大きな数字です。
なぜ格差が生じるのか
男女間の賃金格差には、複数の要因が絡み合っています。
1. 出産・育児によるキャリアの中断
最も大きな要因の一つです。出産・育児で離職し、数年後に復職すると、継続勤務していた場合と比べて大きな年収差が生じます。
- 育休取得による昇進の遅れ
- 時短勤務による収入減少
- ブランク期間によるスキルの陳腐化
- 非正規雇用での復職
2. 管理職比率の低さ
日本企業の管理職に占める女性の割合は約15%程度と、欧米諸国(30-40%)と比べて著しく低いです。管理職になれば年収は大きく上がるため、この差が賃金格差に直結しています。
3. 職種・業種の偏り
女性は相対的に年収の低い職種・業種に集中する傾向があります。
- 事務職、受付、販売など「女性向け」とされる職種
- 小売、サービス、教育など低賃金業種
- 非正規雇用の比率が高い
4. 無意識のバイアス
採用、評価、昇進の場面で、無意識の性別バイアスが働くことがあります。「女性は出産で辞める可能性がある」「管理職は男性向き」といった先入観が、女性のキャリアを制限している場合があります。
5. 交渉力の差
研究によると、女性は男性に比べて年収交渉を行う割合が低い傾向にあります。これが長期的な年収差につながっている可能性があります。
格差解消に向けた動き
近年、格差解消に向けた取り組みが進んでいます。
法制度の整備
- 男女賃金格差の公表義務化:2022年から、従業員301人以上の企業に男女賃金格差の公表が義務付けられました
- 女性活躍推進法:企業に女性活躍の行動計画策定を義務付け
- 育児・介護休業法の改正:男性の育休取得促進
企業の取り組み
- 女性管理職比率の目標設定
- 時短勤務でも昇進できる制度の導入
- 在宅勤務・フレックスの拡充
- 無意識バイアス研修の実施
女性が年収を上げるための戦略
制度の変化を待つだけでなく、個人としてできることもあります。
1. 年収交渉を積極的に行う
転職時、昇進時には年収交渉を行いましょう。給与指数ジャパンの給与計算ツールで市場価値を確認し、データに基づいた交渉を行うことが重要です。
2. 高収入業界・職種へのキャリアチェンジ
IT、金融、コンサルティングなど、高収入かつ実力主義の業界では、性別による格差が比較的小さい傾向があります。スキルを身につけてキャリアチェンジすることも選択肢です。
3. 専門スキルの習得
代替が難しい専門スキルを持つことで、交渉力が高まります。資格取得や専門知識の深化を意識しましょう。
4. 管理職を目指す
管理職になれば年収は大きく上がります。「自分には無理」と思わず、チャンスがあれば積極的に手を挙げましょう。
5. 両立支援制度の充実した企業を選ぶ
育休取得率、復職率、時短勤務者の昇進実績など、女性が活躍できる環境が整っている企業を選ぶことも重要です。
夫婦・パートナー間での協力
女性のキャリアアップには、パートナーの協力が不可欠です。
- 家事・育児の分担
- 男性の育休取得
- キャリアについての対等な話し合い
- 転勤などの決定を一方的にしない
「妻のキャリアを支援することで、世帯年収が上がる」という視点も重要です。
まとめ
日本の男女間賃金格差は依然として大きいですが、解消に向けた動きは着実に進んでいます。法制度の整備や企業の取り組みにより、状況は少しずつ改善しています。
個人としては、市場価値を正しく把握し、交渉力を持ち、キャリアを戦略的に構築することが重要です。給与指数ジャパンで男女別の給与データを確認し、自分のキャリア設計に役立ててください。
男女を問わず、能力と成果に応じた公正な報酬を得られる社会の実現に向けて、一人ひとりができることから始めましょう。