「東京は給料が高いけど、生活費も高い」とよく言われますが、実際のところどうなのでしょうか。給与指数ジャパンのデータを基に、東京と地方の年収格差、そして生活コストを考慮した「実質的な豊かさ」について分析します。
都道府県別の年収データ
まず、2025年の都道府県別平均年収トップ10を確認しましょう。
- 東京都:612万円
- 神奈川県:535万円
- 大阪府:512万円
- 愛知県:498万円
- 京都府:485万円
- 兵庫県:472万円
- 埼玉県:465万円
- 千葉県:458万円
- 福岡県:445万円
- 茨城県:438万円
一方、全国平均は458万円で、最も低い県では360万円程度となっています。東京と最下位県の差は約250万円、率にして約70%もの開きがあります。
なぜ東京の年収は高いのか
東京の年収が高い理由は複数あります。
1. 企業の本社機能集中
日本の大企業の多くが東京に本社を構えています。本社勤務は支店・工場勤務より給与水準が高い傾向にあります。
2. 高付加価値産業の集積
金融、IT、コンサルティングなど、高年収業界が東京に集中しています。これらの業界で働く機会は、地方では限られます。
3. 物価・家賃の高さへの対応
企業も東京の生活コストの高さを認識しており、地域手当や住宅手当で補填しています。
4. 人材獲得競争
優秀な人材を確保するため、企業間で給与の引き上げ競争が起きています。
生活コストの比較
年収だけでなく、生活コストを考慮することが重要です。
家賃の差
最も大きな差が出るのが家賃です。
- 東京23区(1LDK):12-15万円/月
- 大阪市(1LDK):7-9万円/月
- 福岡市(1LDK):5-7万円/月
- 地方都市(1LDK):4-6万円/月
年間で考えると、東京と地方都市では60-100万円の差になります。
その他の生活費
食費、日用品、交通費なども東京は割高ですが、家賃ほどの差はありません。
- 食費:月1-2万円の差
- 交通費:定期代で月5,000円-1万円の差
- 娯楽費:選択肢が多い分、使いやすい環境
実質可処分所得の比較
東京(年収612万円)と地方都市(年収400万円)で、実際に手元に残るお金を比較してみましょう。
東京(年収612万円)の場合:
- 手取り:約480万円(月40万円)
- 家賃:14万円×12ヶ月=168万円
- その他生活費:15万円×12ヶ月=180万円
- 可処分所得:約132万円/年
地方都市(年収400万円)の場合:
- 手取り:約320万円(月約27万円)
- 家賃:5万円×12ヶ月=60万円
- その他生活費:12万円×12ヶ月=144万円
- 可処分所得:約116万円/年
年収差は212万円ですが、実質的な可処分所得の差は約16万円に縮まります。
リモートワーク時代の新しい選択肢
コロナ禍以降、リモートワークが普及し、「東京の給料で地方に住む」という選択肢が現実的になりました。
フルリモートのメリット
- 東京水準の給与を維持しながら、生活コストを大幅削減
- 通勤時間ゼロで、時間的なゆとりが生まれる
- 自然豊かな環境で働ける
- 広い住居に住める
注意点
- すべての職種がフルリモート可能ではない
- 企業によっては地方移住で給与が下がる場合も
- キャリアアップの機会が限られる可能性
- 孤独感やコミュニケーションの課題
Uターン・Iターン転職のリアル
地方への転職を考える際のポイントを紹介します。
年収ダウンの目安
同業種・同職種で地方に転職した場合、一般的に10-30%程度の年収ダウンが見込まれます。ただし、生活コストの削減を考えると、実質的な生活水準は維持できることも多いです。
地方で高年収を得やすい職種
- 医師・看護師(地方では人材不足で高待遇)
- ITエンジニア(リモートワークで東京水準を維持可能)
- 公務員(地域による差が小さい)
- 地方銀行・信用金庫(地域の基幹産業)
どちらを選ぶべきか
東京と地方、どちらが良いかは個人の価値観や状況によります。
東京が向いている人:
- キャリアアップを最優先したい
- 特定の業界(金融、IT、コンサル等)で働きたい
- 多様な人脈を築きたい
- 都会の刺激や利便性を求める
地方が向いている人:
- ワークライフバランスを重視したい
- 子育て環境を優先したい
- 自然豊かな環境で暮らしたい
- 住宅購入など資産形成を考えている
まとめ
東京と地方の年収格差は確かに存在しますが、生活コストを考慮すると実質的な差は縮まります。リモートワークの普及により、「どこで働くか」の選択肢は大きく広がりました。
給与指数ジャパンでは、地域別の給与データを詳しく確認できます。年収だけでなく、生活の質や将来のキャリアプランを総合的に考えて、自分に合った選択をしてください。